褐色脂肪細胞の活性化

背中の褐色脂肪細胞

褐色脂肪細胞の活性化は、ダイエットで痩せるうえで、絶対に無視できないほどのウエイトを占めています。

褐色脂肪細胞という名前からも分かるように、脂肪細胞の一種です。褐色脂肪細胞は特殊な役割を持っていて、脂肪を燃焼して消費カロリーを増やしてくれます。

脂肪なのに、筋肉細胞のようにカロリーを消費するのです。
脂肪というと、食べすぎで、どんどん蓄積されていく「肥満の元凶」のようなイメージがあります。
しかし厳密に言うと、脂肪細胞には2種類あるのです。それは以下の二つです。

  • 白色脂肪細胞 ・・・ 脂肪をため込む働きをもつ (通常の脂肪のこと)
  • 褐色脂肪細胞 ・・・ 白色脂肪細胞を燃焼する働きをもつ

白色脂肪細胞は、摂取カロリーが消費カロリーよりもオーバーしたときや、脂肪の摂り過ぎで貯蔵されます。そうすると内臓脂肪や、皮下脂肪(お腹、二の腕、背中、わき腹、太もも、腰周り、ヒップなど)に付いていくわけですね。つまり全身のいたるところに蓄積するのです。白色脂肪細胞に脂肪がたまると、まずは細胞が大きくなります。それが限界になると細胞分裂を起こして、細胞の数が増えていきます。これが「太る」ということ。

いっぽう褐色脂肪細胞は、心臓や腎臓の周り、首の周り、脇の下、肩甲骨の間といった限られた場所にしか付いていません。しかも、成人で40グラムほどしかない貴重な脂肪。少ない褐色脂肪細胞は、全身いたるところにある白色脂肪細胞を、豊富にあるミトコンドリア内で燃やします。その結果、熱を生み出し、カロリーを消費するのです。

褐色脂肪細胞は、白色脂肪細胞を燃焼する

* 白色脂肪細胞は付きすぎると悪玉となりますが、それ自体は必要不可欠なものです。
皮下脂肪は、外部からの衝撃を吸収するクッションになります。また、緊急のときの大切な貯蔵庫の役割も果たします。水中では浮力となりますし、寒さからも身を守ってくれます。しかし過剰に蓄積すると、内臓脂肪の場合は健康を害することに。皮下脂肪の場合はスタイルを悪くし、腰痛や膝痛の原因になります。

褐色脂肪細胞の働き

褐色脂肪細胞は白色脂肪細胞を燃焼して、カロリーを消費すると述べました。
なぜ、そのような仕組みが人体に備わっているのでしょうか?それは以下の理由からです。

  • 熱を発生させるため
  • 余分なカロリーを消費するため

食事を摂ったあとは、体がポカポカと温まってきますよね?
これは褐色脂肪細胞が白色脂肪細胞を燃やして、熱を発生させているからです。そのようにして、余計に摂取した分を消費しているのです。これを食事誘導性体熱産生(DIT)といい、全消費量の1割を占めます。

褐色脂肪細胞はヒーターの役目

また寒い場所にいると、最初は筋肉がぶるぶる震えることによって、熱エネルギーを発生させます。しかし、さらに長いこと寒い環境下に身を置いていると、褐色脂肪細胞が活性化してきて、熱を発生させます。体温を上げるために、白色脂肪細胞を燃やしてくれるわけですね。

言ってみれば褐色脂肪細胞は、体にもともと備わったヒーターのような存在。カイロがなくても、このような熱源が人体にはあったわけですね。

以上のように褐色脂肪細胞の働きは、大きく二つに分けることができます。
しかし、これらは褐色脂肪細胞が勝手に判断して行なっているのではありません。脳の管理下で活動しているのです。脳から自律神経経由で指令が届いて、はじめて褐色脂肪細胞が活性化するというわけです。

褐色脂肪細胞は熱を発生させ、カロリーを消費する

体を一定の状態に保つ恒常性

脳からの指令を受けるということは、体に備わった恒常性(ホメオスタシス)維持のために、褐色脂肪細胞が使われているということです。人体には、体内環境を一定の状態に保とうとする恒常性が備わっています。

たとえば体温を一定に保つために、暑いときは汗をかきますよね?
そのときの気化熱によって、体温を平熱に下げようとします。それと同様に、寒いときは褐色脂肪細胞が活発になって、熱を発生させるのです。それによって、体温を平熱まで上げようとするわけですね。

寒いときに、褐色脂肪細胞(背中や首の後ろなど)で発生した熱は、その部分の血液を温めます。
次に温められた血液は、全身を循環していきます。その結果、体温が上昇するわけです。足浴みたいなものですね。これらは意識しようがしまいが、自律神経が勝手に調節してくれています。自律神経という名の通り、人が意識でコントロールしなくても、「自分で律する」ということですね。 (自律神経についてはこちら

肥満体になるほど、じつは褐色脂肪細胞の働きが活性化して、消費カロリーが多くなります。
これも、一定の体重(体脂肪率)を保とうという恒常性の働き。ですから本来は、太っている人ほど褐色脂肪細胞の働きが活発であり、消費カロリーも膨大な量になるはずなのです。

もしも、このシステムどおりに事が進めば、世の中に肥満の人はいないことになります。
しかし実際はそうではありません。ということは、太っている人は、褐色脂肪細胞がきちんと働いていないということですね。その原因は、一体どこにあるのでしょうか?

褐色脂肪細胞が正常に働けば、肥満はこの世に存在しない

褐色脂肪細胞が作動しない原因とは?

どうやら肥満の人は、褐色脂肪細胞がうまく働いてくれていないようです。
考えられる原因は、以下のようなものです。

  • レプチンの働きが悪い ・・・レプチン抵抗性がある
  • レプチンの分泌量が少ない ・・・先天的なレプチン欠乏症、栄養不足
  • インスリンの働きが悪い ・・・インスリン抵抗性がある
  • 自律神経が乱れている ・・・過度のストレス
  • 肥満遺伝子がある ・・・β3アドレナリン受容体、UCP1

こちらで解説しているように、肥満の人ほど、脂肪細胞から分泌されるレプチンの量が多くなります。
レプチンは、脳に働きかけて食欲を抑制します。そのほか褐色脂肪細胞に働きかけて、消費カロリーを増やす作用もあります。しかし増えすぎると、脳にある、レプチンを受け取る受容体(レセプター)に抵抗性が生じて、効きづらくなるのです。その結果、食欲を抑制できなくなり、消費カロリーも増えないわけですね。

そのほか、生まれつきレプチンが欠乏している人もいます。
その場合は、いくら脂肪が増えても、分泌されるレプチンの量が少ないため、食欲をあまり抑制できないことになります。また褐色脂肪細胞による消費カロリーも、あまりアップしないことに。レプチン欠乏症ではなくても、レプチンに必要な「ミネラルの亜鉛」が不足すると、同様にレプチンが作られなくなります。

インスリンとは血糖値が上昇すると、膵臓から分泌されるホルモン。
インスリンが効きづらい状態(インスリン抵抗性)になると、血液中にある栄養素が、細胞に吸収されづらくなります。そうなると、行き場を失ったブドウ糖や脂肪が血液中に充満して、高血糖や脂質異常症に。脂肪細胞に刺激がいかなくなるので、レプチンもあまり分泌されなくなります。

前述したように褐色脂肪細胞は、自律神経の支配の元にコントロールされています。
しかし、過度なストレスによって自律神経に不調をきたすと、白色脂肪細胞からのレプチンの分泌量が少なくなります。また脳の視床下部から、交感神経(アドレナリンやノルアドレナリン)の指令をうまく出せなくなります。その結果、「白色脂肪を燃やしなさい」という指令が、褐色脂肪細胞まで届かないことに。どうやら肥満の人は、レプチンや自律神経の働きに問題があるために、褐色脂肪細胞がうまく働いてくれないようです。

肥満の人は、レプチンや自律神経に問題がある

二つの肥満遺伝子

肥満遺伝子

褐色脂肪細胞が活性化できない理由は、じつはもう一つあります。
それが肥満遺伝子です。具体的にいうと、β3アドレナリン受容体UCP1を作る遺伝子に、不具合があるということです。

β3アドレナリン受容体とは、脳が発した交感神経の指令を受け取るための、褐色脂肪細胞の窓口。

脳からアドレナリンやノルアドレナリンの指令が届いて、初めて褐色脂肪細胞は白色脂肪細胞を燃焼し始めるんでしたよね?

しかしβ3アドレナリン受容体に不具合があると、その指令がちゃんと届いていても受け取れなくなるのです。その結果、カロリー消費量も熱量もダウンすることに。
日本人には33パーセントの人に、このβ3アドレナリン受容体の不具合があるといわれています。
その場合、基礎代謝が約200kcalも少なくなります。これは、かなり大きいですよね?

しかも、肥満遺伝子にはもう一つあります。それがUCP1の不具合です。
UCP1とは、運動しなくても脂肪を燃焼できるようにするタンパク質のこと。このUCP1を作る遺伝子に不具合があると、運動しない限り、あまり白色脂肪細胞が燃焼しなくなるのです。脂肪というものは、食後やレプチンの要求に応じて、あるいは空腹時に、運動せずとも燃えるようになっています。ところがUCP1に不具合があると、じっとしているときや寝ている最中に、あまり脂肪が燃えなくなってしまうことに。

日本人の24パーセントの人に、このUCP1の不具合があるとされています。
そうすると、基礎代謝が約100kcal少なくなるといわれています。

β3アドレナリン受容体とUCP1の不具合が両方あると、基礎代謝量が約300kcalも少なくなることになります。それでは肥満遺伝子がある女性は、ダイエットで痩せることができないのでしょうか?そんなことはありません。次に解説するやり方で褐色脂肪細胞を活性化すれば、多少は消費カロリーがアップすると思われます。また、どんなに深刻な遺伝子異常があっても、咀嚼によってヒスタミンやセロトニンを活性化すれば食欲を抑制して、摂取カロリーを減らせます。また、運動すれば消費カロリーを増やすことが可能です。

肥満遺伝子を持っていると、消費カロリーが少なくなる

寒冷刺激が褐色脂肪細胞を活性化

褐色脂肪細胞は前述したように、寒い環境下で活性化します。
ですから、できるだけ暖房を使わずに、(風邪をひかない程度に)少しだけ寒い状況を作り出せば、褐色脂肪細胞が活性化します。細胞を増やして、体温を上げようと働き出すのです。これは人体に備わった恒常性によるのでしたね。

水泳をする女性

また、褐色脂肪細胞が密集している後頭部や背中の上部に、直接冷たいシャワーをかけて刺激することも有効です。

あるいは、18度以下の水温で水泳をすることも効果があります。スキューバダイビングなんてのも面白そうですね。
シンクロナイズドスイミングの選手は、1日に6000kcalも摂取しているといいます。それは褐色脂肪細胞が活性化しすぎて、それだけたくさん食べないと空腹になってしまうからです。

水中では多くの熱が奪われるため、体温を維持しようと恒常性のスイッチが入ります。
つねに褐色脂肪細胞が熱を生み出すために、膨大な消費カロリーとなるわけですね。ですから水泳は、ダイエットの運動法として、とても効果的です。速めに泳げば筋トレのように無酸素運動になります。成長ホルモンが分泌されたところで、ゆっくり泳いで有酸素運動をすれば、脂肪をすぐにでも燃やしていけます。
しかも、その間ずっと褐色脂肪細胞が活性化されて、あなたの余分な白色脂肪細胞を燃やし続けてくれるのです。ただし温水プールではなく、冷たい水である必要はありますが・・・。

そのほか手のひらを冷やすだけでも、褐色脂肪細胞は活性化します。
プールに行く時間がないという人は、こちらのほうが簡単です。手には、冷点という温度を感じるセンサーが密集しているからです。

手で感じたことは、脳に大きく影響します。たとえば、寒い屋外で温かい缶コーヒーを握れば、寒さを忘れて全身ポカポカしたイメージになりますよね?それと同じことです。手のひらだけを冷たくすることによって、脳にとっては、冷たいプールに入っていることに近い状況を作り出せるわけですね。ただしプールの場合は、褐色脂肪細胞を直接冷やせるうえに、実際の体温低下が激しいため、よりいっそうの効果を期待できます。

なお補足すると、DHAやEPAといった魚油(オメガ3)を摂取すると、褐色脂肪細胞の増加に役立ちます。これらは必須脂肪酸であり、体内で作ることができないので、食事から摂取する必要があります。

褐色脂肪細胞を増やす最善の方法は「水泳」

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