時間をかけて、よく噛んで食べる

よく噛んで食べる

ダイエットで痩せるためには、食欲を抑制することが成功のカギです。
それには時間をかけて、よく噛んで食べること、つまり十分な咀嚼がポイントになります。

最低でも、一口30回は噛んで食べたいものです。
これが無意識にできるようになるまでは、「口に入れるたびに、箸を置くようにする」と上手くいきます。

肥満の人ほど、軟らかい食べ物を、よく噛まずに食べる傾向があるといわれています。よく噛んで食べることには食欲抑制の効果があるのですから、あまり噛まないで食べる人は食欲に際限がないわけですね。
それでは、なぜよく噛んで食べると、食欲を抑制できるのでしょうか?

ダイエットにおいて、十分な咀嚼が食欲を抑制するのは、以下のような仕組みによります。

  • 血糖値が上昇するまえに、食べ過ぎないですむ
  • かむ刺激が脳に伝わる → 脳内に ヒスタミンが分泌される
  • リズミカルな運動になる → 脳内に セロトニンが分泌される

当然のことですが、人は食欲を脳で感じています。
脳には、空腹を感じる摂食中枢と、満腹を感じる満腹中枢の2つがあります。上記の血糖(ブドウ糖)やヒスタミン、セロトニンが脳にある満腹中枢を刺激。その結果、お腹がいっぱいと感じて、食欲が抑えられるわけですね。

血糖値の上昇と食欲の抑制

前述したように、よく噛んで食べると血糖値が上昇し、食欲を抑制する効果が期待できます。
ものを食べると、まず口の中で噛み砕かれて、それが食道を通って胃の中に入ります。そして小腸で消化・吸収されて、最後に血液中に流れます。このようなプロセスを経て血糖値が上昇するまでには、20~30分かかるといわれています。そして血糖値の上昇は、脳にある満腹中枢を刺激し、満腹感を覚えさせるわけです。

食べ物を摂取 →→→ 約20分後に血糖値が上昇 →→→ 満腹中枢を刺激

このように血糖値が上がるまでに20分くらいかかるので、20分以内に食べ終わってしまうと、満腹中枢が刺激される前に、たくさん食べ過ぎてしまいます。その反対に食事を20分以上かけて、ゆっくり味わいながら、よく噛んで食べると、全部食べ終わるまえに満腹中枢が刺激されます。その結果、必要以上に食べ過ぎる心配がなくなるわけです。

あなたは、もしかしたらこう思うかもしれませんね。
20分以内に食べ終わらなければよいのなら、べつに咀嚼を多くしなくても、テレビをみたりおしゃべりをしながら、時間をかけて食べればよいのでは?と。

しかし、よく噛んで食べることによって、食べ物が物理的に細かくなります。
それだけではなく唾液内の消化酵素が、炭水化物(でんぷん)を化学的に分解します。ごはんを噛めば噛むほど甘く感じるのは、化学的に分解されているからです。

口の中で時間をかけて咀嚼することによって、小腸での分解作業をかなり助けることになります。
その結果、すみやかに小腸から栄養分が吸収され、より早く血糖値が上昇することに。つまり、よく噛んで食べたほうが、より速やかに血糖値が上昇するので、満腹中枢が早く刺激されるということです。

またテレビなど、ほかのことに気が散っているよりは、食べることだけに集中したほうが、食事の満足度が高くなります。満腹感は脳が感じるものですから、食事のときは食事だけに集中して五感で十分に味わったほうが、満腹感も増幅され、食べすぎを防げるわけです。

* 血糖値の上昇はそれ自体、脳にある満腹中枢を刺激します。そのほか食後に血液中のカロリーが上昇すると、脂肪細胞に働きかけ、そこからレプチンというホルモンが分泌されます。これはブドウ糖が満腹中枢に作用するのとは、また別ルートで満腹中枢に作用し、食欲を抑制します。

ヒスタミンは脂肪も減らしてくれる

血糖値の上昇は食欲の抑制に働きますが、それだけではありません。
よく噛んで食べると、咀嚼筋(噛む筋肉)からの刺激が脳に伝わり、脳内にヒスタミンという物質が分泌されます。ヒスタミンも、脳にある満腹中枢を刺激して、食欲を抑制する働きがあります。

この場合は、べつに20分を待たなくても、よく噛むという運動によってヒスタミンが分泌されます。
先ほどは20分たたないと血糖値が上がらないので、それまでは満腹中枢は刺激されないと言いましたが、
実際には、よく噛んで食べれば、ヒスタミンの作用という別ルートで食欲が抑制されるわけですね。

ヒスタミンには、次の二つの作用があります。

  • 食欲を抑制する
  • 脂肪細胞を分解・燃焼する
スルメ

よく噛んで食べれば、ヒスタミンが食欲を抑制してくれるだけではなく、脂肪細胞まで分解・燃焼してくれるわけですね。

つまり、噛めば噛むほど、食べている最中に脂肪が減っていくというわけです。この作用は、内蔵脂肪で、とくに顕著になります。

ですから男性のメタボリックシンドロームの予防・改善のためには、よく噛んでヒスタミンを分泌させることが、有効な対策になります。

パンなどの軟らかい食材や、麺類を食べることが多い人は、一工夫を加えましょう。
食事の前にビーフジャーキーやスルメなどの硬い食材を、よく噛んで食べればよいのです。ガムでもいいと思います。そうすればメインの食事をする前に、ある程度、満腹中枢が刺激されるので、あまり噛まない食事でも食べすぎを防ぐことができます。

お腹いっぱい食べたいけれど、脂肪も分解したい人は、食後にガムなどを噛むというテクニックが有効です。この場合は、すでに食べたあとなので、「脂肪の分解と燃焼」の効果だけが期待できます。

* ヒスタミンは、必須アミノ酸のヒスチジンを原料として、体内で合成されます。
ですからヒスチジンの摂取量が不足してしまうと、ヒスタミンがあまり作られないので、いくらよく噛んで食べても食欲抑制や脂肪の分解には作用しなくなってしまいます。ヒスチジンが多く含まれている食材は、さんま、マグロ、ハマチ、いわしといった青魚や、果物のバナナです。

セロトニンも食欲の抑制に関わる

トリプトファンを含むバナナ

よく噛んで食べると、ヒスタミンのほかにセロトニンという物質も脳内に分泌されます。そして満腹中枢に作用して、食欲抑制に働いてくれます。

セロトニンは脳内の神経を伝わる物質で、
食欲を抑制する働きのほかに、気持ちを落ち着かせる作用もあります。うつ病の人は、このセロトニンが不足していることが多いといわれています。

セロトニンは、咀嚼という単調なリズムの運動によって分泌されます。
ものを噛み砕いて咀嚼する動きは、どちらかというと単調で、またリズミカルですよね?セロトニンは咀嚼に限らず、このようなリズムにのった運動によって分泌される性質があります。

たとえば歩行(ウォーキング)やその場での足踏み、音読、深呼吸や腹式呼吸などですね。
ですから、このような単調なリズムの運動を食前に行うことで、脳内にセロトニンが分泌されやすくなります。すると、よりいっそう効果的に食欲を抑制することが可能になります。そのほか太陽に当たる「日光浴」にも、セロトニンの分泌を増加させる働きがあるといわれています。夕食前のウォーキングもいいですね。

出不精の人は、食前に家のなかで「その場足踏み」などの単調な運動を、10分くらいしてみるといいかもしれません。この場合は、有酸素運動を意識する必要はなく、たんにリズム運動をすればよいのです。咀嚼も、べつに息がはずむ有酸素運動ではないですよね?そのほか立った状態で、腕を前後にぶらぶら動かすエクササイズも面白そうです。

* セロトニンは、必須アミノ酸のトリプトファンを原料として、体内で合成されます。そのためトリプトファンが不足すると、いくら咀嚼やリズム運動をしても、セロトニンが分泌されにくくなります。
トリプトファンは、大豆やバナナ、肉類、牛乳などの乳製品に含まれています。なおセロトニンの合成には、ビタミンB6とマグネシウムも必要です。3つすべてを含む食材には、ゴマやバナナがあります。

食欲を完璧にコントロールする方法

以上のように、よく噛んで食べることは、3つの観点から食欲抑制に働きます。
ただし、これを「悪用」して摂取カロリーを極端に下げてしまうと、あとから反動がきます。
たとえば、ほとんど何も食べずに、ひたすらガムを噛むだけでも満腹中枢が刺激されて、その場では満腹感を得られるかもしれません。血糖値が上昇しなくても、ヒスタミンとセロトニンの作用によって、満腹中枢が刺激されるからです。

しかし、摂取カロリーが極端に少なくなることは、体を飢餓状態にし、脳にブドウ糖が不足してしまいます。
それでは結局のところ、脳の栄養素が不足するので、時間が経てば脳が空腹信号を発することになります。

食欲というものは、じつは満腹中枢だけで決まるものではなく、空腹感をもたらす摂食中枢も関わっています。この両方を制御してこそ、本当に食欲の抑制ができるといえます。ですから十分なカロリーを摂取しなくても、咀嚼だけで、その場は満腹中枢を騙せるでしょう。しかし血糖値がいくら経っても上昇しないので、摂食中枢のほうが頭をもたげてくるのです。これが時間とともに、空腹感が出てきてしまう理由です。

このように満腹中枢と摂食中枢の両方をコントロールしてこそ、はじめて食欲の抑制ができます
ということは、いくら3つの作用によって満腹感を得られたとしても、そのあとに油断は禁物ということ。

食後に、おいしそうなデザートやケーキを見たり、においを嗅いだり、わずかでも口に運んだりすると、また食べたくなってしまうことに。いわゆる「甘いものは別腹」状態ですね。これは満腹中枢は満足できたものの、そのあとに摂食中枢を刺激してしまったからです。ですから生理的な満腹感を得られたあとは、できるだけ、おいしそうな食べ物から遠ざかり、別のことに意識をむけることが大切になります。

具体的には、食事がすんだら、おいしそうなものが目に入らない場所、においが来ない場所へと移動することです。口の中も、味が残らないように水ですすいだり、すぐにでも歯を磨いてしまいましょう。それが第一段階。そのうえで別のことに意識をむけるようにします。興味のあるドラマでもいいですし、漫画や本を読んだりでもいいわけです。ここまで徹底して、はじめて食欲をコントロールすることができます。

このページの先頭へ