摂食中枢とは?

摂食中枢は、間脳の視床下部(脳の中心付近)にあり、空腹感を起こさせる本体。
食欲中枢のひとつで、満腹中枢とバランスをとって食欲をコントロールしている。脳内では、まず神経伝達物質のドーパミンが分泌され、それが摂食中枢に伝わることによって空腹感が起こる。

摂食中枢が刺激される原因には、「低血糖(*脚注)」と「脳の興奮」の二つがある。
肝臓のグリコーゲンタンクが残り少なくなって、血糖値が下がってくると、摂食中枢が活発に働いて、空腹感が起こる。それによって人間は、自然に摂食行動を起こし、体内に栄養素が供給されて生命を維持することができる。摂食中枢がうまく働かないと、食べたいという気持ちが起きなくなり、どんどん痩せ細っていってしまう。これが拒食症(摂食障害の一種)。

摂食中枢は低血糖状態で刺激されるので、いくらタンパク質や脂質を多く摂っても、血糖値が上がらなければ収まらない。ぶどう糖が不足していれば、いつまでたっても摂食中枢は興奮したままということ。その理由は、脳と赤血球にとっては、ぶどう糖しか栄養源として利用できないため。ぶどう糖の不足は、脳と赤血球にとっては栄養失調状態(飢餓状態)に等しい。そのため摂食中枢を活発にして、空腹感を起こさせ、何としても食事から糖分を摂り込ませようとする。

低炭水化物ダイエットをすると、脳の摂食中枢からの信号が、いつまでも出続ける。
そうなると一日中、食べ物のことばかり考えるようになる。このように炭水化物抜きダイエットは、人間の生理に反した、間違ったダイエット法であることは明白。

もちろん、糖質をやや制限することは、摂取カロリーを抑えるためには必要なこと。
要は、脳や赤血球が必要とする最低限のブドウ糖は摂取すべきということ。脳は、1日に約120グラムのブドウ糖を消費する。いかなるときでも、最低この量を摂らないと、いつまでも空腹感にさいなまれることになる。

もっとも注意すべきは、朝食抜きダイエット。
朝食を摂らないと、前日の食事以降は何も食べていないことになり、かなりの低血糖状態になってしまう。
この状態では脳内にドーパミンが多く分泌されて、摂食中枢がいつまでも刺激され続けることに。食べ物のことばかり考えるうえに、脳にブドウ糖が補給されないために回転が鈍り、勉強や仕事に身が入らなくなる。

そうではなく朝食をしっかり摂れば、血糖値が上昇し、脳に十分なブドウ糖が補給される。その結果、摂食中枢の興奮が収まる。かわりにレプチンやヒスタミン、セロトニンが働いて、満腹中枢が優位になるため、食べ物のことでは悩まなくなる。

空腹感が起きるということは、摂食中枢が食べるようにと要求しているからであり、それは栄養失調状態を知らせてくれるシグナル。これは痛みが、怪我や体の異常を知らせてくれることと一緒。この自然な要求に反して食事制限を行なっても、やがて本能に勝てず、ドカ食いに走ることに。その結果リバウンドすることは、火を見るよりも明らか。

* 低血糖になると、脳の摂食中枢にあるオレキシン作動性ニューロンが活発になる。
オレキシンは、覚醒度を上げる神経ペプチド。獲物を探す行動は危険が伴うため、覚醒度を上げる必要がある。そのため空腹になると、目が冴えて眠れなくなったりする。

脳の興奮も摂食中枢を刺激する

低血糖時だけではなく、興奮してドーパミンの分泌が多くなっても、空腹感から食欲がわいてくる。
たとえば外で買い物をしていると、興奮してドーパミンが分泌されるため、摂食中枢が刺激される。その結果、小腹が空くことになる。

同様に夜、部屋の中でパソコンを使ってネットショッピングをしていると、購買行動とともにパソコンの強い光が脳を興奮させる。そうなると、夜食が欲しくなってしまう危険があるため注意が必要。
そのほか濃い味付けや脂っこいものを食べると、それが刺激となって、摂食中枢が必要以上に興奮する。その結果、つい食べ過ぎてしまうため、これにも気をつける必要がある。

おいしそうなものを見たり、いい匂いを嗅いだときも、脳内にドーパミンが分泌され、摂食中枢が刺激される。食前は当然のことだが、食後も注意が必要。たとえ、お腹がいっぱいになって満腹中枢が刺激されても、油断していると、必要以上に食べ過ぎてしまう危険があるということ。

食事で満足したあとに、視覚や嗅覚(あるいは味覚)で脳に刺激を与えてしまうと、オレキシンという物質が刺激される。そうすると、摂食中枢のほうが満腹中枢よりも優位に傾く。オレキシンが分泌されると、胃の内容物を強制的に腸に送り込み、実際に別腹を作り出すことが知られている。
いったん満腹を感じたら、おいしそうなものに触れない(見ない、嗅がない)ことも食欲抑制にとっては大切。

ワンポイントアドバイス
摂食中枢と満腹中枢は、シーソー(あるいは天秤)のような関係にあります。
もちろん食事を摂って血糖値が上がれば、満腹中枢が優位になり、必然的に摂食中枢は鎮静化します。しかし、いったん満腹中枢が優位になっても、そのあと摂食中枢を刺激してしまうと、そちらに天秤が傾くことに。また食べたくなってしまうことがあるので、油断はできません。要は食欲を抑制するためには、摂食中枢と満腹中枢の両方の舵取りをしなければならないということです。

このページの先頭へ